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長野県飯田市のリニア工事


地下にトンネルを掘られる住宅街

飯田市は、南アルプスと中央アルプスに挟まれ、中央に天竜川が流れる伊那谷に位置します。人口は約97,000人、南信地域の中心都市です。



飯田市におけるリニア事業の経緯

南信州広域連合が2010年に策定した「リニア将来ビジョン」を基に、飯田市は2013年に「リニア推進ロードマップ」を策定しました。「リニア本体工事関連」「社会基盤整備関連」「戦略的地域づくり」という3つの分野で取り組んでいます。

長野県駅(仮)の予定地は決定までに二転三転しています。当初は飯田中心市街地にあるJR飯田駅への併設する案でした。その後、環境影響評価配慮書では高森町東南部~飯田市座光寺の案となり、環境影響評価準備書の段階で現在の上郷となりました(2013年)在来線のJR飯田線の最寄り駅からは1.3kほどm離れているため、飯田市はリニアからの乗り換えのための新駅の建設を提案しました。しかし、2020年に佐藤健市長になると、選挙期間中から掲げていたとおり、費用対効果や所要時間の観点から、新駅設置は取りやめ、バスやタクシーにより在来線に接続する方向性で進められています。一方、「リニア時代」のまちづくりの一貫として航空宇宙産業や信州大学の新学部の誘致は積極的に行っています。



市内のリニアルート

飯田市を通るリニアルートは約15km。80%がトンネルとなります。東京・品川方面からは、喬木村から地上で天竜川、南大島川を橋梁で通過し、長野県(駅)に至ります。その後風越山トンネル(全長5.6km)に入ると同時にり、松川ダム下流をいったん橋梁(0.1km)で通過し、中央アルプストンネル(全長4.9km)に入ります。



市内のリニア工事・関連工事

<リニア中央新幹線事業>

■ 中央アルプストンネル(松川外工区)

本坑4.9km(全長7.2km)、斜坑380m

斜坑掘削が2022年7月19日時点で終了。

※当初斜坑掘削の予定はなかったが、「想定したよりも地表面がもろかった」ことを理由に斜坑を設置。工事期間は1年4ヶ月伸びる予定。(参照)南信州新聞2022年 7月 19日

発注者:鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JR東海からの委託)

施工者:中央新幹線、中央アルプストンネル(松川)外特定建 設工事共同企業体(戸田建設(株)、あおみ建設 (株)、矢作建設工業(株)

工期:2016年12月27日~2027年2月26日

工法:NATM(ナトム)工法


■ 風越山トンネル(黒田工区)

本坑トンネル 約2.3km(風越山トンネル全長約5.6km)、非常口トンネル約1.1km、

発注者:鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JR東海からの委託)

施工者::戸田建設・あおみ建設・矢作建設工業

工期:2016年12月27日~2027年2月26日

残土(発生土)搬出車両数 準備工事期間 約140台/日、トンネル掘削期間 約400台/日✕4年間超


■ 風越山トンネル(上郷工区)

本坑3.3km、 発進立坑、発生土搬出用仮設トンネル

発注者:鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JR東海からの委託)

施工者:風越山トンネル(上郷)特定建設工事共 同企業体(大林組(株)・前田建設工業(株)・ジェ イアール東海建設(株)・若築建設(株))

工期:2021年4月1日~2026年8月31日

工法:シールド工法、仮設発進坑工事、 発生土を搬出するための作業用トンネル(NATM) 工事ほか

※各地の問題②


■ 長野県駅(仮) 

高架橋約510m、橋梁約120m、 土構造約320m、その他駅付帯構造物工事

施工者:清水建設(株)

工期:2021年6月25日~2026年3月31日

※用地買収は飯田市に業務委託(2015年)

2022年7月11日に飯田市で開催されたリニア中央新幹線建設促進県協議会総会にて、JR東海宇野護副社長が「秋には工事着手したい」と発言。

※各地の問題①


■ 天竜川橋りょう 

橋梁約515m(一部喬木村)

施工者:三井住友建設(株)・極東興和(株)・ドーピー建設 工業(株)・吉川建設(株)特定建設工事共同企業体

工期:2020年7月13日~2026年3月31日

防音壁:3.5m

リニアの飯田市の橋梁・高架通過に関する振動や電磁波に関するJR東海の説明資料等https://www.city.iida.lg.jp/site/iida-linear/r010729-0731zakouji-setumeikai.html


■ 保守基地(座光寺)

敷地面積:敷地面積約3・5ヘクタール

施設・設備:構造物や電気設備の検査、交換等に必要な保守用車両について、留置、検査、整備を行うための施設、保守用車両留置のスペース、車庫、検修庫、作業庫、資材庫を設置。

※信濃毎日新聞(2019.11.1)の報道によると、保守基地予定地は、「千年に1度」(2日間で605ミリ)の豪雨発生時に1〜3メートルの浸水が見込まれる区域に含まる。


■ 松川橋梁 

0.1km

風越山トンネルから地上に出て中央アルプストンネルに入る間の橋梁。松川ダム下流に位置する。


■ 発生土置き場(下久堅) 

容量20.5万k㎥(最大盛土高19m)


■ 発生土置き場候補地(龍江) 

容量40万k㎥ (盛土高35m)



<関連工事>

・リニア駅周辺整備

・座光寺SIC

・国道153号飯田北改良  南側(高屋交差点~北条交差点付近)、 駅周(北条交差点付近~座光寺上郷道路) 、北側(座光寺上郷道路~座光寺交差点付近)

・座光寺上郷道路(下段) 、(上段)

・県道市場桜町線 新戸川

・代替地整備(丹保北条地区)、(唐沢宮の前地区) 、(共和地区)



飯田市内で起きている問題の一部

➀ 長野県駅周辺・移転代替地問題

リニア長野県駅周辺で進められる移転

飯田市ではリニア本線と長野県駅、関連事業としての周辺整備や国道拡幅等のため、約370軒が移転対象となっています。駅の予定地のある上郷飯沼北条地区では約100軒が移転を迫られています(中日新聞, 2021年1月29日)。リニア事業が民間事業でありながら、用地交渉は飯田市が窓口となって進めています。市内には、大鹿村のリニアトンネル工事から発生した残土を使って代替地も整備されています。代替地ではすでに新しい家が建ち並び、元の場所には基礎だけが残された跡地が増えています。しかし、補償価格では、代替地に新たに家を建築し、元と同じような生活をすることは困難だといいます。そのため、より土地の安い地区外や市外に土地を探す、または賃貸を選択せざるをえない人もいます。特に高齢の住民は、新築のために新たなローンを組む、返済していくこと大きな負担になります。

移転を拒む住民、どうすべきか決めかねる住民もいます。リニアを中心としたまちづくりを掲げながら、住民に寄り添わない市の対応に批判の声が高まっています。

移転を選んだ人、残る人どちらも、今後の生活への不安、苦悩を強いられています。地域は分断され、ばらばらになるのは避けられません。




② 上郷黒田地区の地下30m以深のトンネル工事

長野県駅から出てすぐに名古屋側に向かって設置される風越山トンネルは、坑口を段丘の斜面に設け、段丘上段の上郷黒田地区の地下を通過します。この地域は約50年前に造成された新興住宅地で多くの住宅が建ち並びます。ここでは、山岳トンネルで用いられるナトム工法ではなく、地下水への影響を減らすためとして、東京や神奈川、名古屋等都市部のトンネル工事で使われるシールドマシンを使って掘削します。シールドマシンによる掘削では、東京外環道で2020年に住宅街での陥没事故が発生している他、周辺では振動や騒音、ひび割れ、河川での酸欠泡の発生等、地上に明らかな影響が生じています。都市部では円滑な地下利用を目的に大深度地下法が適用され、40m以深は地権者や住民の許可や補償を必要としないとされており、リニア沿線の該当地域に住む住民は、大深度地下法の違憲性や工事の中止を訴えています。一方で、飯田市は大深度地下法が適用されない地域なので、所有権は地下まで及びます。しかしながら、飯田市内の他の工事区間、駅整備、高架、橋脚、山岳トンネル等では住民説明会が設けられる中、住宅地地下を通る黒田地区では住民説明会すら実施されていません。家の真下にトンネルが通る人でも未だ知らない人もいます。JR東海は、トンネル掘削の慣例と称して、地上から30mより深い地下のトンネル工事では、地権者や住民への個別の説明、承諾、補償等の交渉はせず、地区に対して説明をするのみという方針を出しています。これがまかり通るのであれば、そもそも大深度地下法自体も必要ないことになってしまいます。万一事故が発生しても、事前に家屋調査も行っていなければ、工事との因果関係を証明することは住民にとっても困難となります。リニア北品川工区では、シールドマシンが土を取り込めなくなり、長期間掘削ができない状況に陥っています。愛知県春日井市でもシールドマシンの刃が欠けて掘削が止まっています。住宅地の地下でシールドマシンに不具合が生じた場合、どのように修繕作業を行うか不安が募ります。

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